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ーー食事が終わって、今は私の部屋。今日はお祝いってことで大好きな手巻き寿司で、葵にぃも居るからテンションが上がって食べ過ぎた。
お互いの両親はお酒も入って盛り上がってるから、彼氏はいないのかとか聞かれるのが嫌で二階に上がって。そしたら暫くして、葵にぃもやってきた。
私はベッドに座って、葵にぃは勉強机の椅子に腰掛ける。
「今日来るなら、そう教えてくれれば良かったのに」
「母さんが急に言い出したんだよ。親同士で電話してたら、なんかそんな話になったってさ」
「あはは、ホント仲良い姉妹だよね」
私も葵にぃも、一人っ子。お母さんと恵子おばちゃんは昔から仲良しで、小さい頃は週一か二位で葵にぃと遊んでた。だから私にとっては、ホントのお兄ちゃんみたいに大切な存在だ。
「花梨、お前なんかあっただろ」
椅子の上で胡座をかきながら、葵にぃがそう口にする。
昔から、私の変化にはお母さんよりも早く気付いてくれた葵にぃ。葵にぃには、嘘も誤魔化しも通用しない。
「…葵にぃはホント、鋭いよね」
「無理して笑ってんのバレバレだっての」
「別に無理はしてないよ」
「時々落ち込んだ顔してた」
思わず口を尖らせて黙り込むと、葵にぃは私の側に来て優しく頭を撫でてくれる。
「無理には聞かない。花梨にも色々あるだろうしな。受かってるか、不安でってわけじゃないんだろ?」
「それもあるけど、それじゃない…」
「言いたくない?」
「…私が、悪いの。弱いから。周りばっかり気にして、いつもビクビクしちゃうから」
「…」
葵にぃはゆっくり、ベッドに座る私の隣に腰掛けた。
「そんなの当たり前だって。周りの評価や自分がどう思われてるか、俺だって気になるよ」
「…でもそのせいで、人を傷付けちゃった」
「友達?」
「…」
「…なるほどね」
なんとなく分かったのか、葵にぃが小さく笑った。
「青春だなぁ、花梨」
「…バカにしてるでしょ」
「してないよ全然。そういうのも必要だと思うしさ」
「葵にぃは彼女いないよね?」
「だったらなんだよ」
「好きな人はいないの?」
葵にぃとはあんまり恋愛の話しないけど、たまに聞いても適当にはぐらかされるだけだった。
「…いるよ」
だから葵にぃのその言葉に、凄く驚いた。
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