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「葵にぃも、いるんだね好きな人」
「も、ってことはお前もいるんだな」
ニヤニヤするから、肘で突っついてやった。
「違うもん、手前で終わったからまだ好きまでいってないもん」
「なんだそれ。お前ホント、俺以外の男には素直じゃないよなぁ」
なぜか葵にぃは、嬉しそう。
「葵にぃは、告白とかしないの?」
「しねぇよ」
「なんで?」
「したら相手に迷惑かけるから」
「よく分かんない」
難しい顔になる私に、葵にぃは私の頭をくしゃくしゃにする。
「分かんなくていーんだよ、お子ちゃまには」
「もうっ、お子ちゃまじゃないもん。高校生なんだからねっ」
「無事なれるといいけどな?」
「あ、ちょっとぉ!」
膨れながらポカポカ叩くと、葵にぃは楽しそうに笑った。
初めて聞いた葵にぃの恋愛の話は、私にはなんだかよく分からない。でも葵にぃのおかげで、私の気持ちは少し軽くなった。
ーー数日後、私は無事志望校に合格。葵にぃに報告したら物凄く喜んでくれて。
もちろんお父さんとお母さんもいっぱい褒めてくれて、その日も手巻き寿司。大好きだから、毎日でもいい位だ。
海苔に乗せた酢飯の上にサーモンときゅうりを乗せて巻いて、口いっぱいに頬張る。
合格の喜びと、これから始まる新しい生活への不安。たくさんの感情をいっぺんに、喉の奥に詰め込んだ。
これから、どんな世界が私を待ってるんだろう。いくら考えても想像もつかない。だけど一つだけ、ハッキリ分かってることがある。
私の新しい世界に、相沢はいない。
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