第一章「私達の初恋」

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ーー 「おい相田、お前二組の牧丘が好きなんだって?」 それが多分、彼との初めての会話。同じクラスの人気者・相沢律(あいざわ りつ)と、全てが平凡な私・相田花梨(あいだ かりん)のファーストコンタクト。 …何て、失礼な奴。 「ち、違うよ!好きじゃないっ」 「嘘だ、こないだ二人で帰ってたらしいじゃん」 「あ、あれはたまたまだよ!帰り道が一緒だから、たまたまっ」 「ははは、焦ってる。あっやしー」 真っ赤になって否定する私を馬鹿にするような、嫌味な笑い方。私は、初めて話したこの時からコイツが大っ嫌いになった。 中学三年生の四月、私と相沢はクラス替えで始めて同じクラスになって。背が多分学年で一番高くて、バスケ部の副キャプテンで、頭もそこそこで、顔も今っぽい感じ。 人気者の彼のことを、クラスが違った一・二年生の時も名前と顔だけは知っていた。 何回か廊下ですれ違ったけど、正に別世界の人って感じ。一緒に歩いてる友達の雰囲気も、纏うオーラも、何もかも。 その時は「確かにカッコいいな」位は思ったけど、関わりたいとは思わなかった。 レベルが違い過ぎて、画面越しに見てるような感覚。 私は私の作った世界で、ひっそりと平穏な学校生活を送っていたかった。 万が一あんな人に話しかけたとしても相手にしてもらえる訳ないし、遠目に見た彼は「誰にでも優しい爽やかで明るい人」というよりは「目立つことが好きな自信家」って感じで。 だから、同じ学校でも接点を持つことはないと思ってたのに。 新クラスで隣の席になってから、相沢は何かと私に話しかけてくる。それも、嫌味やからかいなんかの私が苦手なノリ。真っ赤になって否定すれば、それは彼を喜ばせるだけ。 何がそんなに面白いのかって位笑いながら、また私をからかうんだ。
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