第一章「私達の初恋」

4/14
417人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
相沢律は最初に感じた通り、やっぱり嫌なヤツだった。 自信家で発言力も行動力もある、男子のリーダー。だけど、子供だ。一緒に居る男子も女子も、派手でちょっと悪そうな感じ。 折角仲良しのミオちゃんとまた同じクラスになれて喜んでたのに、こんな奴と同じでしかも隣なんて最悪だ。 「うわ、お前字汚ねぇなぁ」 授業が終わって、相沢が私のノートを覗き込む。 「う、煩いな!普通だもんっ」 「てか、書くの遅っ。もう消されるぞ」 授業と授業の間の、短い休憩時間。遅筆の私は、授業の時間内にノートを写せないことが多かった。だから、次の授業の為に日直によって消されてしまう前にと、必死になって写しているのに。 「あー、ホラ。消されちゃった。おーい、相田がキレてるぞ!まだ全部書いてないのにって」 大声で言う相沢に、黒板を消していた日直の女子が振り返る。クラスでも目立つような、可愛くてちょっとキツい子だ。 「え、何?」 「だから、相田が消すなってキレてる!」 「ち、ちょっと止めてよ!キレてないしっ」 大声で余計なことを言う相沢を、必死に止める私。本当コイツは、余計なことしか言わない。 「えー、だって次の授業始まるじゃん」 不満そうなその子。何故か、相沢じゃなくて私を睨んでる。 「あ…ご、ごめんっ!消して!消して大丈夫だからっ」 慌ててその子にそう言うと、不満そうな顔のまままた黒板を消し始めた。 フウッと小さく溜息を吐くと、ノートを閉じて机に仕舞う。 「あれ、まだ途中なのにいいの?」 横目で睨むと、何が面白いのか相沢は椅子の背もたれに肩肘を付きながら、こっちを見てゲラゲラ笑ってた。 …クソ、コイツだけは。 無視して、次の授業の準備を始める私。ノートは、後でミオちゃんのを写させてもらおう。 「言っとくけど、俺のは貸さねぇよ?」 「だ、誰も頼んでないっ」 ムキになる私に、相沢はまた愉快そうに笑った。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!