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クラス内のカーストが上位の人物と絡むと、ロクなことはない。それが男子なら、尚更だ。
なのに相沢は、私のそんな気持ちをちっとも汲んではくれない。事あるごとに私に絡んで、バカにして、時には他のカースト上位の人達と一緒になって私をからかう。
本人達は楽しいのかもしれないけど、やられてるこっちは堪ったもんじゃない。私は大人しい気質だと自分でも思うけど、それでも相沢には時々言い返した。
まぁ、何のダメージも与えられてないけど。
「大変だねぇ、相沢のお気に入りだと」
小学校から仲の良い伊藤美織・通称ミオちゃんとは、家も近くて登下校も一緒。
ミオちゃんも、私と同じでそんなに目立たないタイプ。だけど自分の意見を持ってて、言う時は誰に対してでもキチンと言うしっかり者。目立たないって言ったけど、目立つのが好きじゃないってだけで、私から見てもミオちゃんは可愛くて告白されたことも何回かあるって言ってた。
そんなミオちゃんは、私にとっては憧れでもある。周りの目を気にして言いたいことも飲み込む自分自身が、あんまり好きじゃなかったから。
「やめてよ、お気に入りなんかじゃない。たまたま隣で、暇つぶしにからかってるだけなんだろうし」
帰り道、私はいつもミオちゃんに愚痴った。ミオちゃんは私の話を笑い飛ばしてくれるから、沈んでた気持ちが軽くなる。
「相沢モテるしねぇ。恨まれないように気を付けなよ?」
「恋愛対象に見られてる感じじゃないから大丈夫だよ。相沢を好きな子達は、私なんかライバルにも入れてないよ」
足元の石ころを蹴飛ばしたら、コロコロと横の溝に落ちていった。
「私は、相沢は花梨のこと気にしてると思うけどなぁ」
隣を歩きながらニヤニヤするミオちゃんに、私は軽く体をぶつけた。
「ちょっとぉ、止めてってば!」
「ああいうタイプは、子供だから好きな子いじめちゃうんだよ」
「知らないよそんなの。ていうかもう止めよ!アイツの話。明日のこと話そうよ」
明日は土曜で、ミオちゃんと電車で大型ショッピングモールに行く予定だ。
私もミオちゃんも、中三になって初めて子供だけで行く許可をもらった。私達のお母さん同士も仲が良いから、二人で行くなら良いよって。
「私、明日の為にお小遣い貯めてたんだ」
嬉しそうに言うミオちゃんに、私も笑顔になる。さっきまでのモヤモヤなんか、すぐどっかにいった。
「私も。お手伝いいっぱいして、お小遣いねだっちゃった」
「二人で行くの初めてだね」
「早く明日にならないかなぁ」
それからは相沢のことは頭の端にも浮かばなくて、ミオちゃんとはしゃぎながら明日の計画を立てたのだった。
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