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一言で言えば、拍子抜け。授業始まるギリギリに教室に戻ったから、すぐに何か言われることはないだろうなとは思ったけど…
「良かったじゃん」
放課後になっても、誰にも何も言われなくて。チラッと隣の相沢を見ても、私のことなんか見えてないみたいに反応なしで。
「逆に怖いなぁ…」
ミオちゃんと二人で家庭科室に向かいながら、私はどうも納得いかないってミオちゃんに話した。
「相沢も、悪いことしたなって思ったんじゃない?」
私達二人は、一年の頃から同じ家庭科部。三年生の今は、ミオちゃんが部長で私が副部長。それほど多くない人数で、楽しく穏やかに活動してる。
「それはないね、絶対。アイツ、自分のこと王様だと思ってるもん」
自信満々の王様。私をからかうあの目は思い出しただけでもムカムカする。
「なんにせよ、このまま何も言われないと良いね」
「うん。ありがとう」
ミオちゃんの言う通り、何もないならそれが一番。無駄なこと考えるのは、もう止めよう。
ーー
「よ」
放課後、部活が終わってミオちゃんと下校してさっきバイバイしたところ。後ろから、ポンと肩を叩かれた。
「牧丘」
家がほぼ隣みたいな感じで、幼稚園から中学校までずっと一緒。もちろん、二人で遊んでたのは小学校低学年位まで。顔を合わせれば話すけど、遊んだりはない。
牧丘はサッカー部のキャプテンで、毎日遅くまで部活してるから、私とこんな風に帰宅時間が被ることはあんまりない。
「部活、遅かったの?」
「あ、うん。体育祭の衣装作ってて」
もうすぐ体育祭。毎年、伝統みたいに家庭科部が応援団の女子の衣装を製作してる。
「大変だな、家庭科部」
「サッカー部の方が大変じゃん」
「別に。部活は大したことない。そんな力入れてないし」
「クラブチームだっけ?そっちの方が大変?」
「練習内容で言えばね。でも楽しいから」
牧丘は、本当にサッカーが好きなんだなぁ。
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