第3章:愛する想い

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ーー拝啓 土田直輝 様 ーー御無礼(ごぶれい)を御許し下さい。 ーー貴方にもう一度御会いしたい。 手紙を書き終えると富子は近所の 郵便ポストに投函した。 返事は来ないだろうと思いながらも 心の何処かでは期待しながら待ち続ける。 3日過ぎ…5日過ぎ…10日過ぎ 直輝からの返事は無い。 返事が来ない間に富子は何通も手紙を 送り続けた。 書き損じた手紙もあり部屋の中は 丸めた紙で散らかり放題になった。 ーー直輝様 一目だけでも良いのです。 ーーもう一度会ってお話ししたい。 ーーそれ以上は望みません。 (あたし…良い歳してなんてはしたない… でも自分の気持ちを抑えられない) 富子はそう思った。 「結婚話を破談にした件は悪かった… でももう一度幸せになって欲しいんだ」 そう言ってお見合いを勧めてきた亡き両親 当時は理不尽だと思ったが その気持ちが今なら痛い程分かった。
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