第1章:年の瀬に…

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「あれ?もう無いの?」 テーブルに置いてあった煎餅(せんべい)が 無くなった事に気が付いた。 どうやらさっき食べたのが 最後の1枚だったらしい。 部屋中探しても煎餅は無い。 「もう無いの?これで終わりかね? 仕方ない。面倒だけど買ってこようか」 何も楽しみが無いのだ。 煎餅でも食べて(ひま)を潰さないと やってられない。 出掛ける前に財布の中身を確認すると 運転免許証が目に()まった。 ーー梅田富子 昭和23年 6月8日生まれ 70歳。結婚歴なし。 残りの余生(よせい)をどう生きるか… 毎日この狭い部屋で独り考える日々である。 「もう夜6時過ぎで外は暗いし寒そう なんだか行くのが面倒だね…」 そう言って富子は不機嫌そうな顔で テレビのチャンネルを切り替えた。
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