第2章:死ぬ前に…

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富子がコンビニの中に入ろうとすると 外に設置してある喫煙スペースで 社会人らしき男女の若いカップル二人が 話し込んでいるのが目に留まった。 「私のお父さんなんて今年定年退職してさ~ 家でゴロゴロしてるよ。」 「マジかよ。良いな… 俺なんて後30年は働かないとだよ。 仕事しなくて良いなんて(うらや)ましいな」 富子が一番嫌いな話だ。 "退職=働かなくて楽チン"なんて そんな訳ない。 最近の若者は想像力が無さすぎる! 私達みたいな年金受給者は雀の涙くらいの お金しか貰えないのだ。 退職して会社に勝手に切られた後は 自分自身で後何年後続くか分からない 人生の金銭管理を考えなくちゃならない。 貴方達若者の100倍ツラいのよ! 怒りが込み上げて説教してやろうと 思った瞬間にふと我に返る。 (あたし…いつからだろう? こんな意地の悪い老人になったのは…) そう思って富子は踏みとどまった。 (寒いし早いとこ煎餅買って帰ろう) 自分も若い時もこんなだったなと思い 恋人がいるカップルを羨ましく感じながら 富子はコンビニで買い出しを終えると 足早(あしばや)に家へ帰った。
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