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「おい、帰りに牛乳買って来いってよ」
母親から一括で入ったメッセージをいち早く確認すると、俺に買い物に行かせようとする。
──年子の弟とは、久しぶりに帰り道が一緒になった。同時期に成長期真っ只中。それなのにいつの間にか、肩が並んだ。
「はぁ?牛乳飲むのお前だろ?お前が買え」
「ん、俺もうちょいでお前追い抜く~」
わざとらしく、俺と目線を合わせて、“牛乳のお陰”とでも言うのか。
……何かヤだな。弟の背抜かれんの。
「マジか、俺も飲むか、牛乳」
「遅くね?ま、いいや、じゃんけんしようぜ」
理不尽な。ま、いいか。言われるがままにじゃんけんだ。
俺はチョキ、弟はグーだ。
「はは!イェー!お前いっつもチョキ出すの」
「いや、お前、俺が勝っても俺に行かせ……ん?」
出したままの“チョキの手”を足を止めてじっと見た。
「何だぁ?犬のう○こでも踏んだ?」
「踏んでねぇわ!」
なんだっけな、今の、この、懐かしい……
「えんがちょ!」そう言って走り出した弟を追いかける。
「古!昭和うまれか、お前!」
「令和だ、令和!」
「結構なニューボーンだな」
あれ、今何考えてたっけな。
……牛乳?
牛乳か?
「とりあえず、コンビニ寄って帰ろうぜ」
ここから家までの道には選べる程にコンビニがある。
「コンビニで買ったら高けぇ!って怒られんぜ?」
「はー、10円か20円だろ?面倒くせぇ」
「俺達の学費が爆高なんだとよ」
「……スーパー寄って帰ろうかね」
「それがいいと思うがね」
来た道を仕方なく引き返した。
スーパーは残念ながら……この先にはない。
「もうちょい早くメッセージしろっつの」
母親に直接は言えないもんで、弟は俺にちょっと愚痴る。自分の飲む牛乳を自分で買うだけの話だってのに。
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