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目の前のツインマンションの隙間から西日が差していた。
ぼやけた緋色の……細い光。眩しさに目を細めた。
あれ、なんだっけな、さっきと同じ、この感じ。
何だっけな。
「あー、懐かしいねぇ」そう言ったのは、弟。
「何が? 」
「あ、何だろな」
そう言って笑った弟の、母親と良く似た綺麗なアーモンドアイ。
懐かしいな。この目、めっちゃ好き。
……いや、こいつが産まれた時から見てる。
なんだぁ?
懐かしいって。
「俺、次はパー出そう」
「んじゃ、俺もパー」
「お、心理戦で来やがったな」
どのみち、勝っても負けてもどうせ俺が先だからな。
「お前は、俺の先駆者」
「おお、リスペクト持って、兄ちゃんって呼んでみ? 」
何でか2キロ分の牛乳も俺が持たされている帰り道。
『遅い!』
母親から一括でメッセージが届いた。
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