光の中の彼女

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 何年ぶり?僕は女の子の言葉に呆然として言葉が出なかった。 「あれ?私のこと忘れちゃったの?君、もしかして私のこと忘れちゃったの?私はずっとあの時のこと覚えてるよ。ホントに君私のこと忘れちゃったの?」 「あ……あの。言いにくいんですけど。誰かと勘違いしてませんか?僕女の子の知り合いなんていないですよ」  僕がそう言うと女の子は急に泣きそうな表情になってしまった。 「バカッ!君、あの時のことホントに忘れちゃったの?私ずっとあの時のこと忘れなかったよ!いつか外に行けるようになったら君にちゃんとお礼するんだって決めてたんだから!」 「だから誰かと勘違いしてるだけだって言ってるでしょ!もうやめてくださいよ!」  僕はいい加減うんざりしていた。うだるような暑さに直射日光を浴びてただでさえ頭がおかしくなりそうなのに、こんなわけのわからない女の子に付き纏われているのだ。  もしかしたら彼女も暑さのせいで少しおかしくなってるのかもしれない。もうダッシュして女の子から逃げようとした時だった。  女の子がとうとう泣きながら喚き出したのだった。 「勘違いなわけないじゃん!ずっとさ君に逢いたくて逢いたくて外に出れる日を待っていたのにさ!何んなのそれ!あのさ、君たしかにここから二つ目の十路地を右に曲がってすぐの一軒家に住んでる赤山サトル君だよね!」  彼女が言っているのは確かに僕のことだった。名前も住所も一致していた。僕は女の子を記憶から呼び戻そうと記憶のページを慌ててめくっていった。  
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