レバニラ炒めが消えた日

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レバニラ炒めが消えた日

「いらっしゃいませ」 「あの、メニューはないんですか?」 「当店はお客さまがリクエストしたものをなんでもお作りいたします。どれもお客さまにとって人生で一番の味になります。ただし、お客さまがそれを食べるのは、これが人生で最後になりますから、よく考えてお決めになるようお願いします」 「ふうん。何にしようかしら。もうこの先食べなくてもいいものとなると、それほど好きなものでなくても良さそうね。そうだ、レバニラ炒めにします。私、そんなにレバーが好きではないので」 「おまたせしました。レバニラ炒めになります」 「わ、美味しい!レバーってこんなにおいしかったんだ!これじゃ、普通のお肉より美味しいくらい。ううん、この世のどんなものよりも美味しいわ」 「お気に召しましたでしょうか」 「ええ。とっても」 私は店を出た。振り返ると、もう店の姿はどこにも見えなかった。 私はどうしてもレバニラ炒めが食べたくなって、片っ端から中華料理店に入ってはみたが、どの店もレバニラ炒めはやっていなかった。 ならば自分で作ろうと、スーパーでレバーを探したけど、どこにも売っていなかった。 レバニラ炒めは私の世界から消えたのだ。
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