危険な珍味

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危険な珍味

「いらっしゃいませ」 「あれ?メニューはないの」 「当店はお客さまが食べたいものをリクエストしていただけるお店です。ただしお客さまが今まで食べたことのあるものに限ります。それと、当店での食事をもって、お客さまが人生でそれを食べるのは最後となります」 なによ、それ。客を馬鹿にしてんじゃないかしら。いいわよ、みてらっしゃい。私はこう見えて、グルメで通ってるんだから。 「じゃあ、熊掌をちょうだい」 ふふふ。こんな若い女の子が食べたことないって思ってたんでしょ。いくらなんでも、熊掌なんて簡単には出てこない。何日も下ごしらえして、ようやく食べられるんだから。 「おまたせしました」 う、これは、本物の熊掌?そんなことないわ。きっと野菜か何かで作った偽物。 「お、美味しい!」 なによ、これ。びっくりするほど美味しいじゃない。ゼラチン質がプルプルで、私が以前食べたものよりも数段美味しい。いいえ、この世のどんなものよりも美味しいわ。 「ごちそうさまでした」 私は満足して店を出た。振り返ると、もう店の姿はどこにも見えなかった。 数日後、熊掌が手に入らなくなったというニュースを見た。個体数が少なくなったのかと思ったけど、そうではないらしい。 なんでも、熊が凶暴になりすぎて、ベテランの猟師の人でさえ、熊に襲われる事件が頻発したという。 でも私は、どうしても、もう一度あの熊掌が食べたかった。あの店を探したが、いくら探しても見つからなかった。 私は猟銃を扱う資格を取り、たった一人で、もはや誰も行かなくなった山の奥深くへと入っていった。
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