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6.謝罪
どんなに触れたいと思っても、決して触れることはできない。ホームに立つ夏樹と僕の間には、電車のドアが立ちふさがっている。
触れることはできないけど、夏樹との距離は、今までよりぐっと近くに感じられた。
柔らかい笑顔で手を振る夏樹。
電車が動き出すと、夏樹の姿はすぐに窓からはみ出していった。
無理なのは分かってる! たとえ、顔を窓に擦り付けたとしても無理だと。それでも僕は、窓に限界まで近づき、覗き込むように顔を横に向ける。そうせずにはいられなかった。
窓から見える景色の中に、夏樹の姿はもう、どこにも無かった。
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