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夏樹の手が、太ももに触れる。その手に体重を掛けながら、背伸びをするように背筋を伸ばすと、僕の目を見たまま、ゆっくりと顎を上げた。
伏し目がちになった夏樹の目は、外からの淡い光を受け、潤んでいるように見えた。
夏樹の動きは、まるでスロー再生のようにゆったりとしていて、とても神秘的だった。それは、窓から入る光のみの、仄暗い空間が、余計にそう感じさせたのかもしれない。
その目に吸い寄せられるように、ゆっくりと顔を近づける。あんなにも狼狽えていたはずなのに、僕の体は不思議なくらい、自然に動いた。
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