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僕らを乗せたゴンドラは、頂上を通り過ぎ、文字盤の二時の辺りまで移動していた。
夏樹の顔が、すーっと静かに離れる。
「恋人っぽいこと、してみた」
僕の目を見上げ、夏樹はいたずらな笑顔で言った。
唇には、まだ夏樹の感触が残っている。僕は反射的に、夏樹の細い首に腕を回した。
今まで、『愛しい』なんて気恥ずかしい言葉を口にしたことはないけれど、今の僕の気持ちを表現するのに、これ以上ふさわしい言葉を、僕は知らない。
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