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生きた人間を操る「芽」
「あなたと、初めて会った日のこと。覚えてる?」
明日覇は、右腕の袖で涙を拭った。
「あ、ああ。最初、オレは殺されると思ったぜ」
「そう。でも、あの時。私は嬉しかったのよ。ようやく、火輪刀を操るあの人の子孫を見つけられて」
祖神様を殺したという斬の祖先・新刀善十郎のことだ。
あははと、斬は苦笑いをした。
「嬉しそうには見えなかったけどな。お前のこと、殺せって言ったりさ」
明日覇は、目を細めた。
「そう、そうね。今でも、殺してほしいって思ってるわ」
バッ
明日覇は、その左手を覆う手袋を取り去った。
「この左手……。私が唯一、このお父さんから受け継いだ爬虫人の証。でも、こんな恐ろしい化物の腕。今の世に必要ないもの」
明日覇は、その金色に輝く左腕を撫でた。
斬は、何と声を掛けてよいか分からなかった。
「私と一緒に、明日那を倒して。あの人達は、いよいよ動き出すわ。神社で、あなたの友達の姿、見たでしょう」
「あ、ああ。オレたちをおびき寄せた織田睦夫のことか?」
「そう。何か、おかしいと思わなかった?」
「うーん、オレのこと分かってなかったような。誰かに操られているような……。まさか!」
斬は、思わず立ち上がった。
「そう、そのまさかよ。明日那達は、『鱗の芽』を生きた人間に使い始めたのよ」
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