91人が本棚に入れています
本棚に追加
出来損ない
「くっ……」
明日覇は、右目を斬られていた。
化物の腕がない方が、明日覇の弱点である。
明日那は、それを狙ったのだ。
「あははは、無様ねぇ。私の様に全身が硬質化した鱗なら、そんな風にはならないのにね。出来損ないだから、そうなるのよ」
高らかに笑う明日那に対して、斬は怒りが込み上げて来た。
「出来損ないだって? 誰だって、完璧な人間なんていないだろうが」
「おや? そういえば、弱っちい人間がいたわねえ。善十郎には遠く及ばない弱者が」
手傷を負った明日覇に代わって、斬は前に出た。
「ふざけるな! オレにだって、善十郎の血が流れているんだ。それに、人間は、努力次第で弱点を克服できるんだ!」
「そう。なら、やって御覧なさい」
ひゅっ
「うおっ」
明日那が一瞬近づいたかと思うと、斬の防弾チョッキが真っ二つにされ、下半分がパラりと落ちた。
(何てヤツだ。こんなの、本当に勝てるのかよ)
だが、何とか勝機を見出さなければ、今度こそ本当に命がない。
最初のコメントを投稿しよう!