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二人同時に
「う、わ、分かった!」
斬は覚悟していた。
明日覇から、爬虫人の股下には鱗がないことを聞いたのだ。
火輪剣の極意は、低いところから斬り上げ、返す刀で一刀両断することだ。
少し前。二人は、こんな言葉を交わしていた。
「だけど、そんなことしたら、君も無事ではいられないだろう」
「私たち爬虫人は、驚異的な再生能力があるから、大丈夫よ。ただ、火輪剣を食らわされた場合、切断面から燃えてしまうから再生できないの」
「分かった。やってみる」
明日覇は、明日那を思いきり締め上げつつ、体を180度回して、斬の方に明日那の背中を向けてやった。
「くっ、小賢しい策を弄しやがって!」
「るさい、お互い様よ。ここであなたは、私と一緒に死ぬの!斬 、早く!」
この時。明日覇は、初めて斬の名前を呼んだ。
「分かった。行くぞ、明日那!」
斬は刀を返し、ツツツと小走りに走って、真下から明日那の股下目掛けて猛烈な勢いで抜き打ちを放った。
ーきえええええええええええええええええええぃ!
その猛烈な気合いが、85メートルから地上まで聞こえた。
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