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落ち行く明日那
明日那は、全身を火輪剣の炎に包まれながら、ふらふらと歩き始めた。
「ああ、あああ! 父、父のように」
彼女は思い出していたのだろう。
110年前に、善十郎によって倒された父と同じ運命を、自分がたどりつつあるということに。
そして、視界を奪われ全身を紅蓮の炎に焼かれながら、明日那はビルの端に向かって行った。
「この無残な姿を、あなたには見せないわ」
「あ、明日那っ!」
斬が声を掛けるとほぼ同時に、明日那は屋上から飛び降りた。
ぼうっ
落ち行く明日那の肉体は、まるで110年の怨念を燃やし尽くすかのような火の玉になりながら落下していった。
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