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「ちょっと、アケチ、何を言ったのよ」
「何って、本当に絵はここにあったのかって聞いたんだよ。単なる確認だよ。よく刑事ドラマでも聞くだろ? アリバイとかさ。『これは皆さんに確認していることなんですよ』って感じでさ」
確かにそうだけど。そんでもって、『僕の事疑っているんですか?』なんて、怒って見せたりするよね。推理ものにはありがちなことなんだけど、当事者にしてみたら腹立たしいことこの上ない。
例に漏れず、部長さんめっちゃ怒ってるし。
「なんなんだ、お前は! 部外者は出て行ってくれ」
「僕ですか? 僕はこういうものです」
そう言うと、アケチは胸ポケットから一枚のカードを取り出した。
「なんだこれは」
「え? それは僕の名刺です」
「はぁ~? 名刺? そんなもんいつの間に作ったのよ」
同じ部に所属している私に無断で、何勝手に作っちゃってんのよ。
あまりの出来事に、部長さんより私の方が先に反応しちゃったじゃない。
部長さんは、ジッと名刺を見ている。
「あ、そうだ。お前らのもあるぞ」
なんか嫌な予感がする。
胸ポケットから何枚かカードを取り出すと、アケチは私と蓮くんにそれぞれカードを渡した。
予感的中。
カードには『探偵部 助手 小林莉子』と書かれていた。
見た瞬間、こめかみがピクピクしたけど、とりあえず、蓮くんのカードに視線を走らせると『見習い』と書かれていた。
「智明くん。あとでゆっくりお話ししましょうね」
「え……ぼ、僕にはお話しすることは……」
言い終わらないうちに何かを察したのか、アケチはプルプル震える私の手から、そ~っとカードを抜き取った。
「これは、破棄します……ね」
「当然! なんで私があんたの助手なのよ! 蓮くんも何か言ってやんなさいよ。見習いなんてひどすぎるッ!」
「別に、俺は見習いでも――」
「よくなーい!」
と、声を張り上げたところで、それ以上の怒声が響く。
「そんなことはどうでもいいっ! 俺はお前らのおままごとに付き合うほど暇じゃない! とっととこの部屋から出ていけっ!」
部長さんはアケチが渡したカードをビリビリに破いた。
「ちょっと、莉子まで何やってんのよ」
聖来が私の脇腹をつついた。
「申し訳ない……」
だって、だって、『助手』ってイヤなんだもん。
私も『探偵』がいいんだもん。じゃなきゃ、誰が好き好んで探偵部になんて入るのよ。貴重な初期メンバーだよ、私。
はじめは暴走するアケチのお目付け役的な感じだったけど、私だって推理小説好きだし、探偵に憧れたりもする。小さい頃なんて、『私、シャーロックホームズと結婚する』なんて、恥ずかしい事も平気で言ってたくらい探偵が好きなのに、なんで私が『助手』なのよ! しかもアケチの助手なんて、冗談じゃない!
聖来に怒られてヘコんでたけど、怒りパワーでちょっと復活した。
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