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大好きな姉ちゃん
僕には五つ年上の幼馴染がいる。
お向かいに住んでいる紗耶香姉ちゃんだ。
小さい頃から僕の面倒を色々見てくれた人で、僕は姉ちゃんと呼んで慕っていた。
いや、僕は姉ちゃんのことが好きだった。
姉ちゃんが大学三年生になったころ、僕はようやく高校生になった。
生活時間が全然違うし、姉ちゃんはバイトもしていたから、会う回数は随分と減っていた。
でも、たまに会う姉ちゃんは凄く綺麗で、僕はますます姉ちゃんが好きになった。
そんなある日、僕はショッキングな場面を見てしまった。
休みの日だった。友達と遊ぶ約束をしていて出かけようとしたところ、家の前でばったり姉ちゃんと会った。
姉ちゃんは僕を見てにっこり笑った。
「久し振りね」
姉ちゃんは綺麗な服を着て、お化粧もしていた。
「ね……姉ちゃん。久し振り」
「遊びに行くところ?」
「うん、そうだよ。姉ちゃんは?」
すると、姉ちゃんは少し頬を赤らめて、僕に近づき、耳元に顔を寄せてきた。
フワッと良い匂いがした。
「ね……」
「デートなの」
耳に飛び込んできた一言に、僕は思わず言葉を失った。
姉ちゃんの顔を正面から見つめる僕の顔はどんなだったろう。
でも、姉ちゃんはそんな事に気付かず、そのまま笑顔で行ってしまった。
僕はただその背中を見送る事しかできなかった。
本当なら言うべきだったのかもしれない。
だけどどんな顔をして言えばいいんだ?
年下の幼馴染としてなら言えたかもしれない。
でも、姉ちゃんに恋する一人の男として、僕には言うことができなかった。
だから僕は、一人きりになってから呟くように言った。
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