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最終決戦!光の勇者VS闇の魔王
女神から力を与えられた光の勇者と、邪神より力を得た闇の魔王。
宿命の二人の戦いが、今始まろうとしていた。
魔王の居城、ダークネスキングダムブラックの最上階広間にて、光の勇者と闇の魔王が対峙している。
勇者は携えた光の剣を魔王に向け、威勢よく叫んだ。
「お前のモンスターや幹部達は全て倒した!後はお前だけだ!」
対する魔王も負けてはいない。威厳ある動きで右手に持った杖を掲げ、睨みつける。
「ふん、舐めるなよ人間ごときが!魔王の力にひれ伏すがいい!」
そして戦いが始まる。まず勇者が剣を掲げて叫んだ。
「うおおおおッ!光魔法!ブライトスパーク!!」
すると凄まじいほどの光が広がり、広間全体が真っ白になる。
対する魔王も杖を突き出して力を解き放つ。
「甘いわ!闇魔法!ブラッディダーク!!」
今度は激しい暗闇、真っ黒なオーラが広間に一斉に広がる。
勇者の光と魔王の闇がそれぞれ拮抗し、バチバチとぶつかり合って、そして――どちらも消えた。
「くっ……やるな!魔王!」
「ふん、貴様もなかなかのものよ!」
初手は互角。そして二人とも次なる一手を打つ、それは――
「ブライトスパーーーク!!」
「ブラッディダーーーーク!!」
さっきと同じ技だった。やはり再び拮抗し、どちらも弾け飛ぶ。
「…………」
「…………」
勇者と魔王は、睨み合いつつも何か少し気にかかるものがあるのか、どちらも沈黙していた。
だがまだ戦いは続く。更なる次の一手として、今度は二人とも詠唱から入った。
「暗闇満ちる世界に女神の白き慈悲を!」
「世界に満ちろ混沌よ!黒き闇広がり全てを奪え!」
そして二人とも技名を叫ぶ。
「ブライトォォォォスパーーーーーーク!!!」
「ブラッディィィィィダァァァーーーク!!!」
やっぱり同じ技だった。先ほどより威力は上がっているが、それはどちらも同じ。またバチバチと拮抗し、対消滅した。
流石に3回も同じ流れが続くと、気まずい沈黙が流れる。それにも構わず再びブライトスパークを使おうとして「ブラ」まで勇者が言ったところで、魔王が静止した。
「おい、待て勇者!お前それしかできないのか!?」
「それはお前もだろ、魔王!」
「女神から力を貰ったんだろ!なんかこう……剣から光波を飛ばすとかレーザーとかそういうのはないのか?」
「お前だって邪神の力なんだから闇の悪魔を召喚するとか、闇の雷とかできるんじゃないのか?」
「いや、邪神の力ってそんな便利なものじゃないぞ。ブラッディダークって言っても暗くするだけだしな……まぁ闇に包めば何も見えなくなるのだが」
「実は俺のブライトスパークも、ちょっと強い光で眩しくするだけで……光に包めばすれば何も見えなくなるんだけど」
「それだけ?というかほぼ同じか……マジかよ勇者」
「こっちこそマジかって言いたいよ。女神と魔王の力が被ってるなんてな……」
勇者と魔王の間に気まずい空気と、同時に奇妙な親近感が生まれた。
「しかし勇者よ、よくその光るだけの魔法でここまで来たな。幹部もモンスターも全部倒したんだろ」
「魔王以外はブライトスパークが聞いたからな。目がくらんでるうちにブライトスパークソードで倒した」
「ブライトスパークソード?なんだ他にも使える技があったのか」
そう言って、再び魔王は仕切り直しと言わんばかりに戦闘ポーズを取り直した。
「ふん……どうやらやはり貴様は敵らしい。さあ、その技で我を倒してみろ!」
「言われるまでもない!行くぞ!ブライトスパークソード!」
威勢良く叫び構えて、勇者は魔王に斬りかかった。普通に。
「おい、お前!普通に斬ってるだけじゃないか!?もっとこう……光パワーをエンチャントしたりするんじゃないのか!」
魔王が杖で剣を受け止めながら抗議する。
「しょうがないだろ!そんな魔法は授かってないんだから!」
「マジかよ……」
ガキン、と勇者を押し返し、二人は再び対峙する。
「どうやら勇者よ。魔法なしで、剣と杖で戦うしかないようだな」
「……そのようだな」
そうして二人は戦い始めた。勇者の剣が幾たびも閃き、魔王が杖ででそれを器用に受け止めつつ反撃する。勇者は反撃を剣で受け流しつつ再び斬りつけるが、魔王は再度杖でそれを止めて突き返す――
しばらくそうした流れが続いた後、二人は戦うのを止めた。再び気まずい沈黙が流れ始める。
「なあ、勇者」
「なんだ、魔王」
「地味じゃないか、これ」
「……だったら何だよ」
「なんというか……虚しくないか」
「戦いに集中しろ。俺達は敵同士のはずだろ魔王」
「しかし我々は勇者と魔王のはず。その決戦がこんな地味でいいのか。こんなしょっぱい決戦が後世にまで吟遊詩人に語り継がれるのだぞ」
「それはまぁ、寂しくはあるが」
「我はこんな地味な決戦、決着は望まん。どうだ勇者、ここは一つお互いの邪神と女神に別の力を貰いに行くというのは」
実際のところ、剣と杖で戦うのもほぼ実力が拮抗していて決着まで長引きそうだった。
これまでの旅路で特に失ったものもなくスムーズに敵を倒してきた(全部不意打ちが成功したので)こともあるし、勇者も正直なところ英雄願望が強いほうでもあったので、その提案を受け入れることにした。
「しかしいいのか、俺は魔王の部下のモンスターや幹部達を全部倒したぞ。憎くはないのか」
「あいつらは我が生きている限り不死だからな。そのうち勝手に蘇る」
「えっマジかよ……まぁ何度蘇っても倒してやるさ」
「ふん、望む所だ。今回はこの程度で許してやるが、次はないぞ。勇者よ」
「それはこっちの台詞だ。次こそ決着をつけてやる」
なんとなく運命の宿敵感を演出しつつ、勇者と魔王は一時休戦を受け入れて別れた。
そして時は流れ――女神と邪神に新たな力を授かった二人の新たな決戦が始まる。
「光魔法!ブライトフィンガー!」
「闇魔法!フィスト・オブ・ダークネス!」
巨大な光の手と、闇の拳がぶつかり合って拮抗し、そして弾けて消滅する。
気まずい空気が一瞬流れたが、二人は諦めなかった。
「ブライトォォォォフィンガーーーー!!!」
「フィスト・オォォブ・ダーーーークネェス!!!」
そして、全く同じ流れが再度行われた。ぶつかり合い、どちらの魔法も虚しくかき消える。
「「またかよ!!」」
勇者と魔王はハモった。
この光と闇の戦いは、その後も延々と続き決着がつかないまま、そのうち二人は友人になり一緒に酒を飲むようになったという。
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