4人が本棚に入れています
本棚に追加
社会において、とうちゃんはとても偉いひとで、なのくんはダメ人間で、幸ちゃんやわたしは多分中間に位置付けられている。なのくんの得点は十年間でゼロ点。
慣れない道を、慣れない駅まで十二分歩く。
十二月の風があたたかい。商店街に入ってゆく。知らないスーパー、知らないおばさんとおばあさん。カラフルなカゴ、ハンドクリームの積まれたカゴ、その横の棚にリードを結ばれた薄茶のヨークシャテリア、駅の入り口へ向けて、低い階段があり、その両サイドに小さな花壇がある。
早く仕事につかなくちゃと思いが波よせると、アンクルブーティの中で爪先が緊張して不穏な感じになる。わたしはその感じから逃れられない、今のところ。
貯金が十万を切ったら、わたしはわたしにダメ人間の烙印を押すと思う。雅子さまも紀子さまも、わたしはどっち派でもないけれど、昔とうちゃんが云っていた。
「皇太子の髪の分け目がどうとか、お前や友達が云ってられるんだ、日本は充分平和だ。世が世なら、俺もユリもみんな明日にはケンペイタイにしょっぴかれるんだからな。勉強しろ。とにかく勉強だ。勉強より良いものはない」
ここのところ話していないから、今もそう思っているのかはわからない。
何が平和かは、少し心身の疲れがとれないと考えられない。
わたしは明後日から生理の予定だから、とりあえずカイロとナプキン買っておこうと、馴染みのないドラッグストアーへ入る。
最初のコメントを投稿しよう!