出会い

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……会社に着き、職場のドアの前に来た。 ……いつもとの違いと言えば、遅刻しているというだけなのに、何故だろうか……いつものも五倍くらい緊張するな…… 少し震える手でドアをそっと開ける。 「あの…………遅れました。すいません……」 みんなの視線が俺に集まる。まるで俺のいるところだけにスポットライトが当たっているようだ。……気まずい。 とりあえずはやく自分のデスクに座ろう……仕事をしていればきっと、こんな羞恥心と緊張はすぐにぶっ飛ぶだろう。そう信じてた数分前の俺をぶん殴ってやりたい。 …………集中できねぇ。まじでもう嫌になってきた。 さっきからずっとこっちを見て笑ってるやつがいて……いや、俺が慌てて支度して格好を気にしなかったのも悪いが……こうなるんだったらいっその事遅刻は確定していたんだし……ちゃんと支度してくれば良かったな…… ……あぁ、こんなことを思うのも良くないが、誰か遅れて来たりしないかな……そうすればそっちにこいつらの興味がいくのではないだろうか…… さらにあれこれ考えてしまい、仕事はほとんど手付かずの状態だ。というか後者の考えとか絶対に人としてダメなやつだろ…… 思わず大きくため息をつく。……あぁ、だめだ、少し休憩がてら飲み物でも買いに行くか…… そう思い、この耐えられない視線から逃げるためでもあるが立ち上がり、自販機のある方へと向かった。 ……。一人静かな通路を歩く。自分の足音が余計に響いて何故だか虚しい気持ちになる。 ……おっ、あったあった。自販機。 ポケットに手を突っ込み財布を取り出す。 “何を買おうか……絶対にこの時期なら温かいものじゃないと許せないだろ。” 自販機の飲み物の下の「つめた〜い」の字になんか目もくれずにそんなことを考えていた俺が横から全速力で走ってくるやつになど気づけるはずもなく、 ドンッッッ、と鈍い音をたてて俺と走ってきたそいつはぶつかった…………
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