1.我こそは魔界の神なり!

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 少しばかり余談話をしよう。世を忍ぶ仮の姿の俺についての話を。  世を忍ぶ仮の姿で俺が普段何をしているのか、並びに俺の勤務先での仕事の内容について少し詳しく説明する。  まずは工場の作業場に設置された機械が、野球ボールほどの大きさの一個の鉄の塊に、穴を開けたり切断したりをする。  その作業が終わり、機械の加工により四等分された直方体の形の鉄の塊が、均等の間隔で並べられてベルトコンベアーの上に乗って運ばれて来る。ここからが俺様の出番だ。  機械によって加工された製品と呼ばれる鉄の塊には、加工断面などにバリと呼ばれる切りカスが残る。そのバリを除去するために、鉄製の棒状のヤスリを使ってヤスリ掛けをして製品の加工断面を滑らかな表面に整える。それが俺の仕事だ。  一日約十時間の労働時間内で、一勤務で約二百個ほどの製品のヤスリ掛けの作業を行っている。  まあ、こんな話など取るに足らん内容だ。実にくだらん。ちなみにこの工場で何が作られているのか、俺は全く知らない。暗黒波動拳に関わる話でもないので知る気にもならない。 世を忍ぶ仮の姿を演じるがためのしがない仕事なのだが、これがなかなかの重労働である。手は油で汚れるし、爪の中にゴミも詰まってしまう。何より肩が凝るのが一番辛い。 勤務時間は決まって夕方の六時から始まり、朝方の四時か五時頃に終わり帰宅する。これが俺の世を忍ぶ仮の姿のライフ・スタイルである。
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