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「おい! タナダシゲル! ぼうっとすなって何べんも言うてるやろ! お前ええ加減にせんとホンマにシバくぞ!」突然政岡が怒鳴ってきた。彼は顔を真っ赤に染め凄い剣幕でこちらを睨んでいる。
俺はどうして良いか分からず、ただ呆然とその場に立ち尽くした。心臓の鼓動が小刻みに速く波打つ。そして再び頭の中が真っ白になった。手足も無意識に震え始めている。殴られるかもしれない。
身の危険を感じた俺は空かさず自らの頭を両手でかばいつつ、しばらく縮こまりながら時が経つのを待った。
どのくらいの時間が経過しただろうか。それはたったの数秒ほどだったかもしれない。長い沈黙が続いた。すると政岡は呆れた様子で鼻を一度鳴らした。そして深い溜息を吐いて自分の持ち場へとゆっくり戻って行った。
助かった。今まで彼から殴られたり酷いことをされたことは一度も無いのだが、とりあえず今回も殴られずには済んだ。俺は安堵した。そして俺は再び愛想笑いをしながら政岡に軽くお辞儀をした。
多灘茂、俺の世を忍ぶ仮の姿の名前だ。俺にとってその名前は何の意味も為さない。そして何度でも言う。
俺の真の名は、魔界の覇者にして明けの明星の審判者、ルシファー・ドミニオンなり!
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