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2.そして、運命の歯車は動き出す
とある日の勤務開始前、俺は工場建屋の玄関口にある掲示板を眺めた。
夕刻ということもあり、辺りは薄暗く掲示板に貼られている掲示物の文字は目を凝らさなければよく見えない状況にある。俺は必死に掲示物の文字に目を凝らした。
「バーベキュー大会開催」と、掲示物の見出しには大きく書かれている。その下には開催日時が記載されている。場所はこの工場の駐車場らしい。会社の職員三百人ほどが飲み食いをするぐらいの広さは余裕にあるな。
どういう風の吹き回しか分からないが、この会社がこんな催しをするのは、俺がこの会社に入社して以来初めてのことだ。
再来週の日曜日の朝十時開催か。夜勤明けで少々疲れが残っている状態にあるだろうが、その日の朝からは休日だ。
催しが終わってから体を休めれば何も問題は無い。昼に勤務する職員たちとの交流を深めるのにはとても良い機会だ。
ただ、一つ気になることがある。当日に俺が着く予定のテーブルの席だ。
とりあえず自分の名前を探してみよう。あ、あった。
夜勤務でほぼ毎日のように政岡としか交流の無い俺にしてみれば当然のことだなのだが、同じテーブルにいるメンバーの名前は誰もが知らない者たちばかりだ。その上俺以外のメンバーは全員が女性職員のテーブルになっている。だがしかし、その中で一人の女性の名前が目に留まった。
比嘉絢香。この会社でほぼ全ての男性職員たちが憧れている女性職員だ。魔界の神である俺にとって禁じられていることではあるのだが、彼女は俺が密かに恋心を抱き想いを馳せている女性でもある。
比嘉、いや絢香の一番の魅力はその美しさはもちろんのことなのだが、何よりも誰に対しても優しく接する朗らかで気さくな所だ。
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