2.そして、運命の歯車は動き出す

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 俺は過去に一度だけ会社の廊下で絢香と擦れ違ったことがある。そしてその時に俺は偶然にも彼女と目が合ってしまったのだ。  俺は絢香のあまりの美しさについ見惚れてしまい、その場で呆然と立ち尽くしてしまった。そして次の瞬間、俺は身体中に電撃が走ってしまい、俺の身体は金縛りにあったかのように思うように動かなくなってしまったのだ。  なせだか分からないが、俺は思わず恥ずかしい気持ちにまでなってしまった。しかしそんな俺に対し彼女は満面の笑みを浮かべながら、「お疲れ様です」と、一言挨拶をしてくれたのだ。それはほんの一瞬の出来事だった。  その時、俺は確信した。比嘉絢香は俺に気がある、と。そして禁じられたこととは言え、その時に俺は彼女への永遠の愛を誓ったのだ。彼女なら俺の全てを捧げても構わない、と。絢香ならば、それほどのリスクを犯す価値のある女性だ、と。  もう一度俺はテーブルの配置を確認してみた。絢香は間違いなく俺の隣の席だ。ついに俺にも運が向いてきた。運命の女神は俺に味方をしてくれている。  そんなことより、当日どういう風に彼女に接しようかを考える。ここは男らしさを見せるためにワイルドにやや上から目線で接してみようか。はたまたここは少年ぽさを見せて母性本能をくすぐるように甘えてみようか。アイデアは無限に広がる。込み上げてくる心の高揚はもはや自分でも制御出来なくなってしまいそうだ。  「シゲルちゃん、なあシゲルちゃん?」突然男の声が聞こえてきた。しかし俺はそれを無視した。  「おいタナダ!」突然男は怒鳴ってきた。思わず俺は我に返った。俺のすぐ傍に政岡が立っていた。
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