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3.脅威! 影からの刺客!
改めて比嘉絢香について考えてみる。
彼女は三年前の春に沖縄県の高校を卒業した。そして高校の卒業を機に上京してこの会社に入社してきた。
年齢は二十一歳、俺がこの会社に入社した十三年前の頃に彼女はまだ八歳か。そして俺が十歳の頃に彼女は生まれた。絢香、生まれてきてくれて本当にありがとう。
話は変わるが、絢香が俺の妻になったならば当然に彼女の姓は多灘になる。多灘絢香、なかなかに似合っているじゃないか。よし、子供の名前も考えてみよう。
「もし男の子なら、俺の名前の茂の文字を一字入れねばならない。やはり茂雄か。いや、茂治か。女の子ならば絢香の絢の字か香の字のいずれかを入れたい。絢子かな? いや、何か俺らしさが足りない。茂香とか? おお! これだ! 女の子なら茂香にしよう。決まりだ。男の子の場合はその時にまた改めてよく考えるとしよう。と、その前に結婚式はいつ上げれば良い? いや、その前に入籍の日だ」と色々模索していると、何やら強い視線をすぐ近くの距離で感じる。
我が生命を狙う刺客か? 俺は警戒しつつ視線を感じる方を振り返った。すると派遣社員の伊田野英明がすぐそばでこちらを見ていた。
ちなみに今は勤務が終わり、男子更衣室で私服に着替えているところだ。
「な、何ですか?」と俺は伊田野に尋ねた。ジロジロと他人のことを見やがって。気持ちの悪い奴だ。悪寒がする。
「いや、いつも着替えるのが遅いから、ちょっと観察してました」と伊田野は全く悪びれる様子を見せない。そして「シゲカって何ですか?」と尋ねてきた。
「あ、いや、あの……ンー……」俺は思わず恥ずかしくなってしまい俯いてしまった。そしてしばらくして再び伊田野の顔を見ると、彼はほくそ笑んでいた。
俺は急いで着ていた作業着の上着を脱いで着替え始めた。すると更衣室の扉が開き政岡が入って来た。
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