分かってても、

1/1
前へ
/5ページ
次へ

分かってても、

「企業秘密?まあいいや。えっとねぇ……そうだ、三郎!」 いたずらっぽく顔をにこやかにさせながら、咲楽は言うけど、ボクは本気で否定した。 「絶対嫌だ。もっとかっこいいのにしてよ。しかも何でいきなり三?」 「わがままだなぁ。それじゃぁ、太郎!」 「変わんないし、嫌だ」 「それじゃぁ、一之介!」 「なんでだよ。よけい嫌だ」 「──じゃあ、奏楽(そら)。奏でるに、楽って書いて奏楽。嫌?」 「ううん、それがいい。どうして奏楽なの?」 「私、弟がいたの。でも、交通事故で死んじゃった。その弟の名前が奏楽なの」 「そんな名前つけてもらっちゃっていいの?」 「うん!」 多少の罪悪感を感じながら、その名前を使うことにした。 咲楽を神社の外まで連れていく。咲楽はすぐに帰っていった。 もうきっと会うことは無いだろうと思う、願う。仲良くなってしまったらまたつらい思いをするから。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加