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分かってても、
「企業秘密?まあいいや。えっとねぇ……そうだ、三郎!」
いたずらっぽく顔をにこやかにさせながら、咲楽は言うけど、ボクは本気で否定した。
「絶対嫌だ。もっとかっこいいのにしてよ。しかも何でいきなり三?」
「わがままだなぁ。それじゃぁ、太郎!」
「変わんないし、嫌だ」
「それじゃぁ、一之介!」
「なんでだよ。よけい嫌だ」
「──じゃあ、奏楽。奏でるに、楽って書いて奏楽。嫌?」
「ううん、それがいい。どうして奏楽なの?」
「私、弟がいたの。でも、交通事故で死んじゃった。その弟の名前が奏楽なの」
「そんな名前つけてもらっちゃっていいの?」
「うん!」
多少の罪悪感を感じながら、その名前を使うことにした。
咲楽を神社の外まで連れていく。咲楽はすぐに帰っていった。
もうきっと会うことは無いだろうと思う、願う。仲良くなってしまったらまたつらい思いをするから。
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