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ずっと、その光に憧れていた。
高校三年。若葉が育つ四月の下旬。昼休みの教室には明るい光が差し込んで、その陽光が僕には、相馬のための舞台照明に見えた。
「相馬ー、お前ほんとにそこ受けんの」
「そうだって」
「親とか反対しない?」
「された!」
いたずらが成功した子どもの笑顔。純粋さの中に積み重ねた経験値分の知恵が混ざっている。けれど違いがあるとすれば、決して思いつきではないだろうこと。芯のあるはっきりとした声がそれを物語っていた。
県内でも五つの指に入る進学校で、当然のように四年制大学が進路を占める。しかし相馬は仲のいいクラスメイトに囲まれて、あっけらかんとIT系の専門学校に行くと言い放った。
「椎名は決めた?」
「――うん、一応」
「そっか、俺まだ迷ってて。渡部は?」
「うーん、微妙」
知らずと相馬に奪われていた視線を、僕は目の前の田畑と渡部に戻した。弁当を食べながら、耳は意識の半分で相馬の声を拾う。
三年間同じクラス。
相馬と僕の接点はこれだけだった。授業でペアになったりグループになったり、機会があれば話をするようなただのクラスメイト。ただ一つだけ他の人と違ったのは、僕がこうして相馬を追ってしまうこと。
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