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明るく快活、いわゆるクラスの中心にいて、陸上部でも部長を務める相馬。初めはもしかしたら相馬のことが好きなのではないかとか、思春期のような悩みに呻いてみたりもした。けれどそういう甘さや酸っぱさはなくて、ああこれは憧れなのだ、とある日唐突に気づいた。
それは明るさや友だちの多さや、要領のよさとか夢があるとかそういうものではなかった。そんな人は他にもいて、そもそも人のよさなんて、僕には見つけられないほどたくさんある。
それでも目をひかれたのは、ああした振る舞いの奥底に流れる相馬の芯が見えたから。どういうものかと聞かれたら、言葉にするのは難しい。けれど相馬の言葉の端に、行動の隅に、持ち合わせているであろう芯が時おり姿を見せるのだ。
一方の僕は美術部で、子どもの頃から大人しいと評されて特にとりえもない。
絵は好きだ。目の前の光景を手元にしまうのも、頭の中を目の前に広げるのも。けれどそれでお金が稼げるほどの才能はない。それが夢かと言われるとそうでもない。何をおいても夢中になれるわけでもなく、じゃあ他にと考えてみても見当たるものはない。ただぼんやりとなんとなく。自動で進む毎日に身体を置いているような感覚。
楽しいこともあって、大変なこともあって、毎日をすごすだけで日常がすぎていく。そんな僕は、だから相馬に光を見たのだと思う。
『今どこにいる?』『今日片野さんとこでご飯食べるけど』『はるさんと今野もいる』
がたん、ごとん。がたん、ごとん。
心地いい揺れにうっかり落ちそうになった意識を、スマホのバイブに引っ張り起された。
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