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空から降る星。
人々は1年に一度の夜を宴で祝う。
此処は退屈な街。
いつか絵で見た太陽を知る者は居ない。
人々は知らない。
太陽の神々しさも。
その存在でさえも。
私は何時も祈っている。
いつか本物の太陽を見ることが出来る日が来ることを。
私は退屈な祭りの様子を屋根から見ていた。
星は輝きを失うことなく街に降り注ぐ。
仮装したおかしな人々の群れ。
今日は星降祭。
1年に一度の特別な日。
そして、私が最も嫌いな日。
人々は太陽の事を「神に抗う炎」と言い、軽蔑する。
この街では、星や月がこの世の全てとされている。
人々は夜空に祈り、明星を祀る。
誰一人として太陽を讃える者は居ない。
「こんな世界、抜け出せたら良いのにな。」
私は呟いた。
「だったら、二人で抜け出そう。」
彼は私の手を取り、微笑んだ。
どれ位歩いただろうか?
目的地は誰も知らない。
ただひたすら歩くだけ。
「やめろ、やめろ」と声が聞こえた。
私達は止まらない。
神に抗う少年少女が夜の砂漠を歩く度に、足跡は増えていく。
やがて世界に灯りが灯る。
その瞬間を、私達は初めて目にした。
何時も夢見ていた光景が目の前に広がる。
私は息を飲み、初めての世界に目を見開いた。
いつか絵で見た光景と同じ、神秘的な光景だった。
君は私の顔を見て笑う。
いつまでも、私達は世界の中心だ。
長い夢を見ていた。
私達は、手を繋いだまま、次の夢へと意識を手放した。
二人は、決して醒める事の無い夢へ―――
fin.
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