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1-2.胸ノ高鳴リ
「宇都宮で降りた子、すっげぇ可愛くなかった?」
「覚えてないよ。早く彼女でもつくれば?」
いっそのこと、ツヨシが彼女をつくってくれたら、僕は楽なんだけど。
ミチルではない、誰かと付き合ってくれたら、ね。
「彼女いたらさ、キョーとこんなとこまで来ないっての。
しかも、空手部、恋愛禁止だし」
「ファンの子、たくさんいるのにね」
「彼女できたくらいで、俺は弱くならないっての!」
「寧ろ、愛の力で強くなるんだろ?」
「流石、分かってるね。我が心の友は」
「で? キョー、何で黒磯までやって来たんだよ?」
「ちょっと、一緒に行きたい場所があってさ」
「だから、もう着いたんだからさ。教えてくれても良くない?」
「いずれ、分かるって」
「で? ここからはバスなのか?」
「迎えの車が来るはずなんだけど」
僕は、ツヨシに見つからないように、こっそりと手紙の中身を確認する。
うん、やっぱり黒磯駅で合っている。
招待状を封筒に戻す時、何かが封筒から落ちた。
僕は、反射的に落ちたものを拾い上げた。
ほんの一瞬だけど、光った気がする。
正体は白い小さな石。
あれ? こんな石封筒に入ってたっけ?
光ったのは、石英成分が反射したのだろうか?
「山本様に高田様ですか?」
不意に声を掛けられ、振り返ると、端正な顔立ちの紳士が立っていた。
身長は僕と同じ位だから170cm位。
やせ型というか、引き締まっているのが、スーツ越しにも分かる。
ドラマに出てくる執事さんのような出で立ちだ。
「あ、はい。僕が山本です」
「左様でしたか? 良かった、良かった。お迎えに上がりました。どうぞこちらへ」
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