1-2.胸ノ高鳴リ

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扉の向こうで待機していたのは、木製の大きな馬車ではなく、幌付きのオープンカーの様な馬車だった。 アールが付いたステップに足を乗せ、革張りのシートに並んで座る。 藤田さんは、馬を繋いでいたロープを外すと、ひらりと御者台(ぎょしゃだい)に乗り込んだ。 どうやら、藤田さんは執事ではなく、御者さんらしい。 「はいっ!」 藤田さんの掛け声で、馬車は走り出した。 僕達は、さっきまでの宇都宮線シートよりも固い客席の馬車に揺られた。 想った以上に揺れるので、車輪を見てみる。 車輪の外側はゴムではなく、黒塗りだが、硬い木材か鉄製のようだった。 そりゃぁ、ダイレクトに(ケツ)に来るわけだ。 路上に目を向けると、道路はアスファルト舗装ではなかった。 大きな道を進んでいるにも関わらず、だ。
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