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 優美は人目も(はばか)らず、泣きながら駅まで走った。遙の話は衝撃が大き過ぎて、受け止めきれなかった。頭の中で大きな鐘がガーンと鳴り、膝ががくがくと震えた。傍らのコートとバックを掴むと、逃げるように店を飛び出したのだ。  ホームに入って来た電車に乗ったが、夢遊病者のように電車を乗り継ぎ、気がつくと、母が住む駅で降りていた。  母が住む公団は、駅からバスで十分ほどだ。  ロータリーをバス停に向かって歩いていると、背中から「優美……」と、やわらかい声がする。  ゆっくり振り返ると、心配そうな面持ちで、母が立っていた。 「遙から電話もらって……大丈夫?」 「お母さん……」 優美の大きな目から、大粒の涙が溢れる。  母は二、三歩あゆみ寄ると、優美の背中に手を添え、ハンカチで娘の涙をぬぐった。  優美の涙が引くまで、母は無言でずっと優美の背中を、やさしく撫でていた。
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