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それで扉はあっさり開いて、弐織がいつもどおりに入ってきて、
「おい、壱琉!! 毎朝毎朝なんて格好してるんだよ!?」
いつもどおり叫ぶ様にお叱りの言葉を口にした弐織は、そのせいで頭痛が悪化したのか、少し眉を顰めつつ軽く頭を抑えた。
「旧世代体質」の症状の1つに起床後の頭痛があるんだし、叫ぶと悪化するのも調べたから知っている。それならわざわざ叫ばなくても良いのに。
つーか、毎朝毎朝怒られるけど、そんなに下着だけの格好って問題なのかな?
ここはオレの家だし、ハラスメントコードだって出ていないから、セーフだと思うんだけど。
弐織が叱る理由はイマイチ分からなくて、毎朝、こうやって叱られる度につい、首を傾げてしまう。
空調は個人に合わせてプログラムが調整してくれるし、ここはオレの家。
さすがにそこまではしないけど、裸でほっつき歩いていたって、誰に責められる事もないと思うんだけどなぁ。
「……毎朝毎朝言ってるけどな、ハラスメントコードが出なければ良いって問題じゃねぇよ」
「だけどコードが出てないなら、弐織は不快に思っていないんだよね?」
「だからそういう問題じゃねぇって……」
今度は呆れたように頭を抱えてしまった。「旧世代体質」のせいか、弐織は変なところが厳しいと思う。
オレ達にとって当たり前のシステムを一切受け付けない体質、それが「旧世代体質」だ。
だから弐織は自力で起きなくちゃいけないし、設定時間になったから眠くなるワケでもなければ、頭痛や腹痛、発熱とかの体調不良にも付き合わないといけないらしい。
だけどハラスメントコードは、そういう「旧世代体質」の人にも適応されていて、不快感や恐怖感を抱かせる事は出来なくなっている筈。
だから弐織が、着替え途中で下着姿のオレを見て「不愉快だ」「セクハラだ」なんて感じれば、同性だろうが幼馴染だろうが関係なく、オレはシステムによって強制的に着替えさせられたり、弐織との接触ができなくなる。
下着姿のまま弐織と話せているってことは、弐織が不快感を抱いていないっていうのとイコールなのに、なんで毎朝、頭痛に耐えながらでも叱るんだろう?
オレ達はシステムの演算結果で生活しているけれど、影響を受けない「旧世代体質」の人達は自分で考えて判断するしかない。その分、自分の中の倫理観とかを大切にしているのかも。
弐織の場合で言うなら、誰かがいるのに下着姿でいるのはおかしい、とか。
別にオレも倫理観がない方ではないけど、ちょっと面倒そうにも見える。
「少しはしっかりしろ、って言いたいんだよ。つーかお前いくつだよ? 高2がされる説教じゃねぇだろ、服をちゃんと着ろ、なんて」
「外じゃしっかりしてるじゃん? 家の中くらいだらけさせてよねー」
冗談めかして、少し拗ねた風に唇を尖らせてみたけど、弐織はあっさりスルーした。
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