感情とは操作できるものである

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「……あれ?」  端末への興味は十分満たせたのか、テレビを見だした弐織が間抜けな声をあげた。首も僅かに傾いてる。  番組配信サービスはいろんな媒体で見られるようになっていて、それさえシステムが個人の好みをスキャンして、観たい番組を自動的に映してくれる。歴史の授業で習った、遥か昔の「チャンネルを回す」っていう習慣は、すごく面倒臭そうな反面、少し面白そうにも思った。  自分が観たいものをワクワクしながら探していく。今の時代にはない感情だから。  だけどシステムの影響を受けない弐織は、それが可能で、こうやって興味が惹かれるような番組をタップで探している。  いつか、弐織の情報をオレの端末に組み込んでおこうか、と聞いたら、そういうのはどうしても慣れないから良い、って返されたっけ。  さて、そんな弐織が自分の手で見つけ出した番組はなんだろうとテレビに目線を向ければ、芸能チャンネルだった。  俳優のなんとかがこの映画に出るとか、モデルのなんとかが突然仕事を止めたとか、ハラスメントコードに引っ掛からない程度の番組。いや、時々アウトっぽい情報も流れるけど、そういうのはオレのシステムではシャットアウトしてあるから、弐織も見られない筈。  案の定、報じられていたのは俳優のなんとかと女優のなんとかの結婚報道だった。  弐織がこういうのを真剣に観るのって意外なイメージだったんだけど。思わずオレも首を傾げる。
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