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システムを完全にオフにしたオレの表情は、さぞ分かり易かったんだろう。
「間抜け面だな、壱琉」
弐織はクスクスと笑った。いたずらの成功を喜ぶ小さな子供みたいに。
だけどそんな笑顔も一瞬で、弐織は真剣な表情でオレを見つめて、それから、とても穏やかに、幸せそうに微笑んだ。
「お前の思う通りで合ってるぜ。オレには想い人がいる。だけどこの感情も、婚約者様への愛になっちまう。だからその前に、せめて伝えておこうと思って。……お前のこと、ずっと大好きだったぜ、壱琉」
「弐織……」
オレはそれしか言えなかった。
弐織はもう1度微笑むと、「じゃあな」なんて普段と変わらない調子で言って、オレの家から出て行った。
まるで明日も明後日も、その先もずっと、今までと変わらずに会う事が出来るみたいに。
だけど弐織は明日も明後日も、ずっと、オレの家に来る事はなかった。
弐織の好きなメニュー。「旧世代体質」が食べやすい朝食。2人分のそれは決まってダストボックス送りになった。
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