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僕のお父さんとお母さんは、お医者さんだ。大きな病院で働いていて、患者さんもたくさん受け持っていて忙しく、家に帰ってくるのはいつも遅かった。だから、家にはだいたい僕しかおらず、いつも一人っきりで遊んでいた。
ある日、僕は学校から帰ってきて、公園で遊んでいた。公園にはいっぱい鳩がいた。僕には得意技があるんだ。後ろから鳩にこっそり近づいて両手で捕まえるの。これができるのは学校でも僕だけだった。ただその日は、捕まえるだけというのも飽きてきて、捕まえた鳩の首を包丁で切っていったんだ。
五匹の鳩の首を切って、家に持ち帰って、それをテーブルの上に並べて、お父さんたちが帰ってくるまでじっと眺めていたの。
最初にお母さんが帰って来たんだけど、鳩の首を見た瞬間、その場に倒れたんだ。その後すぐお父さんが来たんだけど、お父さんも顔が真っ青になったんだ。
お父さんはお母さんを病院に運んだ後、僕にこう言ったんだ。
「いいか、動物の首は切っちゃいけないんだ。分かったか」
お父さんの強い言い方に、僕はこくりとうなずいた。どうやら僕はやってはいけないことをやってしまったみたいだ。
それから僕は中学、高校とお父さんの言うとおり真面目に勉強し、大学の医学部に入った。そこを卒業し、お父さんのいる病院で働くことになったんだ。
ある日、お父さんの仕事部屋を訪ねようとしたとき、少しだけドアが開いていて、中から会話が聞こえたんだ。
「また○○のせいだよ。あいつは××と組んでいるからどうしようもないんだ」
その名前は、病院で一緒に働くお医者さんの名前だった。他にも、何人かの名前があがり、悪口のようなものを言っている。
「あいつらさえ消えてくれればなあ」
お父さんがぽつりと言った。僕はすうっとその場から離れた。
「お父さん、見せたいものがあるんだ」
そう言ってお父さんを僕の家に招いた。僕は働き始めてから一人暮らしをしていたんだ。お父さんは快く承諾してくれた。
「見ててね」
家に入るやいなや、僕は奥の部屋につながるふすまを勢いよく開けた。そこには大きな透明のビンがずらっと並んでいた。ビンの中にはホルマリン漬けされた人間の生首が入っていた。
「ほら、お父さんが消えてほしいって言ってた人たちだよ」
そう言ったものの、お父さんは泡を吹いて倒れており、聞こえてないようだった。
僕は大きくため息をついた。どうやら僕はまた、やってはいけないことをやってしまったみたいだ。
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