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強張った顔で俯いていた私に、柔らかな目差しを向けて言葉を続けた。
「あのね……私、海外で職場の同僚から結婚を前提の交際を申し込まれてるの……その人、とてもいい人なんだ」
その言葉に私は、心臓をギュッと掴まれた様になり、胸が苦しくなった。
「だから、今、ヒナを想う気持ちを伝えたいの。あの時、言えなかった言葉を……でないと……私は前に進めない……の」
言葉の終わりは、掠れてしまっている。
「……ミズキ、ずるい……ミズキの未来を私に決めろ、なんて」
私も掠れたか細い声で答える。
「ごめん、ごめんね。そう、そうだよね。あの時、ヒナを突き放してしまった私がこんな事言うなんて……ダメだよね……ごめん。忘れて……」
弱々しく震える声が、不思議と私の胸に響く。
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