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「Hello!あ、ごめん。もしもし、ヒナ?」
透き通る様な声色の持ち主が問いかける。私は一瞬、見知らぬ相手と話してるような感覚を覚えた。
「は、はい。ミズキ?久しぶりだから違う人と話してるみたい。今何処にいるの?」
どうやら私達は到着ロビーですれ違ってしまったらしい。
互いに通話しながら相手を探して歩く。
少し離れた場所、コーヒースタンドの向こうから同じ様にスマホを手にキョロキョロしながら歩く人が見えた。
相手も私の姿を認め、足早に近づいて来た。「ヒナ、見つけたっ」スマホの受話器ごしに聞いた声。
今度は分かった。それは私の耳がはっきりと記憶している声だった。
「ミズキ、私も、見つけたよ。ミズキ」
私はそう言ってから、自分自身の弾むような声に内心ドキッとした。
そして、自分の心にベールを掛ける様に気持ちを落ち着かせた。
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