「大洗はいいぞ」

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 いい意味で言うのなら、時代の流れを上手く取り入れた神社。  悪い意味で言うのなら、時代の流れに媚びて神格性を捨てた神社。  どちらに捉えるかは人それぞれだろうが、私はこの神社。いや、この大洗の地は古くから続く歴史に基づいた結果今の形になった、神の御加護に守られた地なのではないかと推測する。  というのもこの大洗磯前神社。事の発端は先に書いた二神がこの地に降臨したことから始まったのだが、その時「遥か昔にこの地を作り海へ消えたが、今一度民を救うべく舞い戻ってきたぞ。」と言ったのだそうだ。国造りと豊穣の神のセットである。人民はさぞかし喜び、救われたことであろう。  それから長い年月を経た2011年3月11日。  あの大震災により、大洗町は壊滅的な被害を受けたそうだ。当時あまり報道されることは無かったが、港沖では急激な流れによる巨大な渦潮が発生し、荒波が街を一夜にして飲み込んだ。私は県外の人間であり、幸いこの地震による被害を受けなかったのだが、当時の写真や立地を見るにどれだけ悲惨な状況だったかは想像に難くない。  ガルパンの話が持ち込まれたのは、震災後のその年の秋頃だったそうだ。  何でもプロデューサーである杉山 潔氏が茨城県出身であるため大洗という地形をよく知るのと、観光スポットが集中しているため舞台背景として使いやすかった点に着目し話を持ってきたそうだが、私はファンでも無ければアニメオタクでもないため詳細は知らない。これには製作側の色々な事情があるらしく、一概にこれだとは私の口からは言えない。    復興第一で忙しい中、当時どこの馬の骨とも知らぬアニメの話を持ち出され町民はさぞかし困惑したことだろう。しかし度重なる折衝と熱意の賜物か、今ではアニメも大洗も経済的に大成功を納める結果となった。当人達曰く、最初から経済効果の話は一切しないことを念頭に置いてプロジェクトを進めてきたそうだが、まるで昔降臨した二神の様にガルパンは大洗町を救ったのである。  この二つの救済劇により大洗町は救われたのだが、どちらもただ棚ぼたで成功を納めたのではない。決して震災で絶望すること無く、新たな火種となる波に恐れずに乗り、一致団結して大きくしていった町民達の尽力あってこそなし得たことなのだ。  アニメでも団結して大きな目標に立ち向かう様に、現実世界でも大きな夢に向かって団結した結果成し遂げられたものなのだ。日本が敗戦後荒野と化した国土を建て直し、今の街並みまで再建できたのも当時の方々が諦めずに立ち向かったからだ。  変革は人を尻込みさせがちであるが、どんな結末であれ最初から諦めたらゼロのまま。決してイチにはなりはしないのだ。
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