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「大体、俺は族やってた時みたいに、この渡世って世界は、好き勝手出来る世界だと思ってたんです。
ところが、どうだ。
やれ、喧嘩はするなだの、シャブには手を出すなだの、カタギみたいに縛り事が沢山あるじゃないですか。
金も、族やってた時に比べれば、会費や義理掛けで出ていくばっかりですしね。
俺はね……、不良としてビッグになりたいだけなんですよ。
だったら、悪い事でも何でも、必然的に手をつけていかなきゃいけないでしょ?
カタギが出来ない事を出来んのが、ヤクザなんですからね。
それに、族やってる経験から言わせてもらうと、悪い事もしないと組織はでかくなりませんよ?
俺、『ホライゾン』をそうする事で、でかくしていきましたからね。
ねぇ、組長。
アンタ、この組どうしたいんですか?
このまま、中澤組の下で……。
安倍組を、本家の枝の枝で終わらせる気ですか?
俺はゴメンですよ。
昇る気がなければ、ヤクザやってる意味がないですしね。
組長も補佐も、俺のシャブの事をどうこう言ってますが、これはまず手始めです。
そこで金を作ったら、どんどん手を広げてって、この安倍組を日本一の組にしてみせますよ。
俺のこの気持ち、組長も補佐もなんで分からないんですか?」
言い終えた古田は、私とイタッチの目を順繰りに見つめる。
気のせい、だろうか。
古田の目が、赤くなっているような気が私にはした。
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