・ヤクザの現実

5/12
233人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
「大体、俺は族やってた時みたいに、この渡世って世界は、好き勝手出来る世界だと思ってたんです。 ところが、どうだ。 やれ、喧嘩はするなだの、シャブには手を出すなだの、カタギみたいに縛り事が沢山あるじゃないですか。 金も、族やってた時に比べれば、会費や義理掛けで出ていくばっかりですしね。 俺はね……、不良としてビッグになりたいだけなんですよ。 だったら、悪い事でも何でも、必然的に手をつけていかなきゃいけないでしょ? カタギが出来ない事を出来んのが、ヤクザなんですからね。 それに、族やってる経験から言わせてもらうと、悪い事もしないと組織はでかくなりませんよ? 俺、『ホライゾン』をそうする事で、でかくしていきましたからね。 ねぇ、組長。 アンタ、この組どうしたいんですか? このまま、中澤組の下で……。 安倍組を、本家ので終わらせる気ですか? 俺はゴメンですよ。 昇る気がなければ、ヤクザやってる意味がないですしね。 組長も補佐も、俺のシャブの事をどうこう言ってますが、これはまず手始めです。 そこで金を作ったら、どんどん手を広げてって、この安倍組を日本一の組にしてみせますよ。 俺のこの気持ち、組長も補佐もなんで分からないんですか?」 言い終えた古田は、私とイタッチの目を順繰りに見つめる。 気のせい、だろうか。 古田の目が、赤くなっているような気が私にはした。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!