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「……だからといって、ウチのクラスメイトを使って覚醒剤を売るのは許されないよ。
最初に言ったように犯罪だし、アンタが調子のいい事を言ってるせいで、今ウチのクラス。
ちょっと、大変な事になってるんだから」
感情の起伏を覆い隠し、抑揚を欠いた声で私は古田に返した。
「全ては、安倍組の為なんですよ」
しかし、古田は同じ主張を繰り返し、そのまま続ける。
「それに、盃の件も俺は大マジメです。
もちろん、シャブが許されない事は、俺も重々承知しています。
けど、手っ取り早く金を稼ごうと思ったらシャブですし、結果それでまとまった金が入ってくるんですよ?
組の為に、危険おかして俺を慕ってる若い奴らが犯罪おかしてるってのに、見返りも何も無いってのは、そりゃおかしな話ですよ。
出来れば、アイツらには盃なり何なり、形で組長からねぎらって欲しいんですがね」
「お前が自分勝手に組の為と、ただ思い込んでるだけだ」
私の代わりに、イタッチが言い放つ。
その声は、まるでドライアイスのように冷ややかな声だった。
「大体、組としてはシャブに手をつけて欲しくないのに、組長に断りもなく組仕事なんて言って、ガキ共を勝手に使った挙げ句、盃をやれだと?
そんな言い分、通る訳ねえだろ」
「……そうですか」
古田は返すと、分かりやすいくらい肩を落とした。
「なぁ、古田」
イタッチは言うと、テーブルの脇に転がっている灰皿を拾い上げ、そこに煙草の灰を落とす。
「お前、なに焦ってんだ?
まだ、十分若いだろ。
男を売るチャンスはこれから先、お前にはいくらでもあるんだぜ?
それなのに、くだらねえ事して男を下げるんじゃねえよ」
「くだらない事……」
伏し目がちに、古田は言った。
「昔の俺に戻りたいんですよ、俺は……」
そして古田は、呟くように続けて言った。
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