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・プロローグ
「……あふ」
若頭補佐のイタッチに見られないよう、私は小さくアクビをした。
けど、アクビはきっちりと見られていたようで、それを見たイタッチは、生活指導の先生みたく口パクと表情で私を諫めた。
──だって、暇だし眠くてしょうがないんだもん。
気分を悪くした私は、唇を尖らせる。
すると、イタッチは鋭い目で私を睨み付け、再び口パクと表情で私を諫める。
──あー、もう。
この儀式、早く終わんないかな。
私は思う。
そして、眠気で半開きになっている目で、ごにょごにょ難しい事を言っている紋付き袴のオッサンをそれとなく見てみた。
「……古来より、盃の流儀は多々あると言われております!
しかしながら、私はまだ若輩故一つの流儀しか心得ておりませんので、不作法がありましても、何とぞご容赦……」
──何言ってんの、コイツ?
眠気を誘発させる、呪文のような単語を並べまくってるオッサンに私は激しく苛立ちを覚えた。
気分を変えたくなった私は、オッサンから視線をそらし、辺りに点在している様々なモノに目をやる。
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