過去の記憶を整理しよう

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過去の記憶を整理しよう

 針子としての仕事が終わったあとは、数時間の自由時間が与えられる。 いつもは、同僚達と茶や菓子をつまみながらおしゃべりをしたり、庭園を散歩したりして過ごすのだが、翠珠は頭が痛いから部屋で過ごしたいといって、下がらせてもらった。  針子は、宮女の中でも高い地位とされている。皇族が身に着ける品を縫うからだ。 翠珠は四人で一室を使っているが、寝台一つと、部屋で食事をしたり作業をしたりするのに使う卓をひとつ。衣装箱と小さな鏡を個人の持ち物として与えられている。 それから、寝台の脇に置かれている小さな整理棚も個人の持ち物だ。整理棚に置かれている裁縫道具の入った箱をにらみつけながら考える。 (……今は、たしか天元(てんげん)三年……崔国が滅亡したのは、いつだったかな)  天元というのは、崔国で使われている共通の暦だ。元号が変わるきっかけは、皇帝が代替わりした時だ。  ゲームが始まったのは、天元十年。ゲーム内の時間は一年間だ。国が滅亡したあとの年号もわかっているのは、文浩を攻略対象者としたルートもクリア済みだから。 国を取り戻したあと、崔国復興のため、暦は天元十一年と続けられていた――ような気がする。
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