過去の記憶を整理しよう

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 国が滅んでから、ゲームが開始するまでの五年間の文浩は、国を取り戻すための仲間を集めたり、庶民を苦しめる盗賊退治を行ったりしていたらしい。  それはともかく、今は記憶を整理する方が先だ。手早く墨をすり、新しい紙を取り出す。 (……たしか、飢饉があって)  飢饉の年については、ゲーム本編では語られていなかった。 (国中で疫病が流行ったという話もあったっけ……?)  飢饉があり、十分に食べられなくて体力が落ちたところに疫病の流行があった。さらに、隣国遼国から攻め込まれたとゲーム内で文浩が言っていた気がする。 そんな風に過去の記憶を整理する。紙を広げ、墨はすったけれど、まだ筆を走らせてはいない。  戦争というのがどのくらい続くのかわからないけれど、国一つ滅ぼすのなら、一年か二年かかるんじゃないだろうか。  となると、早ければ今から二年後、天元五年には戦争が始まると考えておいた方がいい――ということは、飢饉となるのは今年じゃないだろうか。 (無理無理無理無理、こんなの絶対無理……!)  国全体を救うのは無理でも、家族と一緒に逃げ出したいと思った。だが、父にそんなことを言ったところで、鼻で笑われてしまうだろう。
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